「うわあー!! 凄い綺麗ー!」
辺りが暗くなってきた頃、一気に桜のライトアップが始まった。
下から照らされる桜は艶やかで、息を飲むほどに美しい。
昼間の明るい姿からは想像も出来ないほど、妖艶に佇んでいた。
桜が陰樹なのも今の姿を見ていると理解出来る。
サーッと風が桜を撫でて、ハラハラと美が落ちていく。
その光景に、頭の中の邪念も花弁と一緒に散っていく気がした。
しばらく無言でそれを堪能し、人が次第に少なくなって来た頃、ユウが言葉を発した。
「……そろそろ帰るか」
「……そうだね」
二人でゆっくりと桜を見ながら帰り出す。
そして丁度公園を出た時、スマホが音を立てた。
どうやらメールが入っても気付かなかったらしい。
それで、電話を掛けてきたらしかった。
掛けてきた人は、父親だった。
どうも今日は感情が揺さぶられることが多い。
気分が上がったり下がったり、もう疲れたよ。
「ちょっとごめん」
ユウに断って、電話に出る。
「はい」
久し振りに聞いたその声が、短く用件を伝える。
「――え?」
私の返事なんか気にもせず、彼は通話を切った。
「大丈夫?」
ユウが声を掛けてくれる。
「どうかし……」
「死んだって」
彼が私の異変に気付いた時、私は言葉を重ねた。
「……は? え、何? どうした?」
「……母親が――死んだって」