その日の夜、和弥さんが病室にきた。
顔が見れて安心している自分がいる。

和弥「…少し話せるか?」

いつまでも逃げていられないから頷く。

和弥「春川先生に会って来た。」

…っ⁉︎

和弥「お前の…父親だな。」

「あ…あの人が、認めたの?」

そんなはずはない。奥さんとの間に息子と娘がいて
それは公にしてるけど、私の存在は誰にも、
1度だって認めなかったはず。

最初は、苗字も変えろと言われていた。
でも祖父は私の事を大事にしてくれていた。
もしかしたら同情だったのかもしれないけど、
それでも祖父と養子縁組を組む時に苗字が
違うのは良くないと祖父が言ってくれて。
祖父と同じ苗字で生きてこれた。

祖父と暮らすようになってからは父親家族が
祖父の家に来ることはなくて、もちろん父親の
家族には会ったこともない。

私の存在を知っているのかどうかも知らないけど。

ー『苗字は一緒でも親子の縁は切れている』ー

そんな事を言っていたのを思い出す。

あの人が認める筈がない、自分が1番大切なんだから。

和弥「…認めた。」



……



…嘘…