そう…父親はこうなる事を警戒して、
私に医者に関わるなと言ったんだ。

和弥「前にも話したけど、喘息の発作はストレスでも
悪化すると言ったな。あの日、過呼吸になるほど
身体に負担がかかってた。
…それは間違いなくあの人が原因だろ?」

「……。」

和弥「俺も何を話してたとか詳しいことは知らない。」

和弥さんはまだ何も知らない。
だったら私の口から言えることは何もない。

「……。」

和弥「何があった?亜妃の口から聞きたいんだけど」

「……。」

和弥「…俺には言えない事なのか?」

「……。」

一向に喋ろうとしない私に痺れを切らした和弥さん。

和弥「分かった、もういい。
とりあえず明日、また迎えに来るから…」

そう言って帰ってしまった。

翌日。
私は迎えに来た病院専用の車に乗って
堂林総合病院へ転院した。

毎度お世話になっている個室。
連れてきてくれた看護師さんに部屋を変えて欲しいと
お願いしたけど、主治医が決めたから変えられない
と言われてしまった。

部屋に入っても、1日中MRIなど脳の検査で
ほとんど部屋にいる事はなかったけど。

その日は回診も常田先生で、和弥さんが私の
部屋に来ることは無かった。

聞いてみようかとも思ったけど、昨日の事もあって、
怖くて聞くのを辞めた。

次の日の夕方になっても和弥さんが来ることは
一度もなかった。

…もう見捨てられちゃったのかな。
まぁ、当然といえば当然のことだけど。

それでもやっぱり現実を突きつけられた気がして
悲しくなる。