ああ言っていたけど、本当かな……?



「桜ちゃん、バイバイ!」

「うん、バイバイ、日奈子ちゃん。気をつけてね」



今日はお兄さんと会うらしい日奈子ちゃんが、急いで帰っていった。

私も、帰ろう。

廊下を出て、きょろきょろと辺りを見渡す。万里くんの姿は、どこにもなかった。

あれはただの、あの場の冗談だったのかな? でも、もし本当だったら……。

どうするべきかわからず、あたふたしていると、廊下の奥から走ってくる人が見えた。

その姿に、「あっ……」と声が漏れる。

その人も私に気づいたのか、まっすぐこちらに向かって走ってくる。



「……っ、ごめん、遅くなった」



私の目の前で立ち止まって、万里くんは申し訳なさそうにそう言った。



「ううんっ……!」



先に帰らないでよかったっ……。



「帰ろ」



隣に並んだ万里くんが、そう言って微笑んだ。