「……むしろ、振られるのは私のほうで……」



そんな嘘の噂は、あんまりだ……。



「ほんとは、私の片想い、なので……だから……ち、違い、ますっ……」



ちゃんと否定しなきゃと思って、つい大きな声で言ってしまった。

教室中が静まっているのを見て、やってしまった……と血の気が引く。

私、恥ずかしい……。

自分が振られること、わざわざおっきな声で宣言してしまった……。

穴があったら入りたいとは、まさに今の状態のことを言うんだろう。

でも、後悔はしてない。

ちゃんと誤解は解きたかったし、万里くんの名誉を傷つけるような噂は……これ以上広がってほしくなかった。



「…………桜?」



――え?

シーン……と静まった教室に、大好きな人の声が響く。



「……っ」



振り返ると、いつからいたのか、目を見開いて私を見つめる万里くんがいた。



「……今の、ほんと?」