……っ、また何か言われてる……。

すっと視線を下げて、見ないようにする。



「ていうかさ……」



気にしちゃいけない……聞こえないふり、聞こえないふり……。



「プリンスって、好きな人いたよね?」



――え?

1人の女の子の言葉に、私は思わず持っていたジョウロを落とした。

あっ……。

花に当たらなかったことに、ほっと胸を撫で下ろす。

でも……今の……本当?

万里くんに……好きな人って……。



「あー、あたしも聞いたことある」

「有名だよね~。1年の頃から、告白した子に『好きな子がいるから無理』って言って断ってたらしいし」



その会話を聞いて、私はなぜか無性に泣きたくなった。

そう、だったんだ……。

全然知らなかった……。

万里くん……好きな子いたんだ……。

ぎゅっと、引き裂かれそうなほど胸が痛い。堪えきれずに、涙がじわりと溢れた。