目に涙をためながら、俺に紙袋を押しつけた藍。



「藍! ちょっと、待っ……」

「1人で帰る! もう放っておいて!!」



大声でそう言って、藍は逃げるように走り出した。

追いかけようとしたとき、手をつかまれる。

……チッ。



「ねー、1人で帰るって言ってるんだから大丈夫だよ。高校生でしょ?」



俺の手をつかむ、女の子。



「……放してくれない?」



低い声で言えば、おどおどしながらも手を放した。

けれど、追いかけようとした俺を、呼び止める声が再びあがった。



「おいおい、お前がいないと間に合わないって……!」

「提出明日の午前までだし、急がないとマズいだろ?」



ゼミ仲間たちの声に、内心嫌気がさす。



「……そうだね」



ここまで頼りにされると、信頼を通り越して都合よく使われている気にしかならない。