さっきから、乃々から香る自分と同じシャンプーの匂いや身体の密着で相当理性が揺らいでいるのに、この上目遣いは反則だ。
「ほ、ほんと……? 終わった……?」
捨てられた子犬のような、頼りない表情でそう聞かれ、思わず力加減も忘れ抱きしめてしまった。
乃々の首筋に顔を埋めて、大きく息を吸う。
あー、抑えろ俺……。
ふー……。
すぐに平静を保って、抱きしめる力を緩めた。
「うん、もうテレビを消したから平気だよ」
「うっ……こ、怖かったっ……」
安堵した様子で、再び俺の胸に顔を埋める乃々。
俺の理性が、ぐらりと大きく揺れる。
「乃々は本当に、怖いの苦手だね」
はぐらかすようにそう言いながら、落ち着こうと口元を手で押さえた。
とりあえず、今は乃々から離れよう。
そろそろ限界だと思って、距離を置こうと手を離した俺とは反対に、乃々が抱きしめる手に力を込めた。