乃々が好きそうな動物が映っていて、一瞬コメディものか何かだと思ったが、すぐに画面が一転。

不気味なBGMとともに、ゾンビ化した動物が現れた。



「ひゃっ!」



叫び声をあげた乃々が、俺のほうを振り返って、抱きついてくる。

とっさのことで、ドライヤーが当たりそうになったが、なんとか回避できた。

ぎゅっと、足にしがみついてくる乃々。



「こ、怖い映画っ……やだっ、消して京ちゃん……!」



縋るように頰を擦り付けてきて、思わずごくりと息を呑んだ。

……か、わいい……。

ああダメだ、加虐心が煽られるというか……俺に縋ってくる乃々が可愛すぎて、もっと見ていたい。
昔から乃々はホラーものが大の苦手で、今も自分でテレビを消す余裕すらないようだ。

俺は優しく頭を撫でて、そっと囁いた。



「大丈夫だよ、怖くないから。消してもいいけど……こういうのって最後まで見なきゃ呪われちゃうんじゃなかったっけ……? いいの?」



乃々以外の人間が聞いたら、すぐに気づくような冗談を口にする。

乃々が甘えてくれるなら、俺は平気で嘘をつける男だ。