「真由」
こうくんは私の名前を呼んで、再び帰るために足を動かした。
「はー……やっと2人になれた」
帰り道。
人通りが少なくなり、辺りには私とこうくん以外の人はほとんどいなくなった。
盛大にため息をつき、頭をガシガシとかいたこうくん。
多分松沢さんのことを言っているのだろうと思って、私は苦笑いを返した。
「な、なんだか、大変そうだね……」
「……マジでうぜぇ、あの女。転校しろよ」
「き、来たばっかりだよ……」
でも、松沢さんはやっぱり……あれ、だよね。
こうくんのこと……好き、なんだよね……。
今日1日、ずーっとこうくんにくっついていた。
無視されてもめげずに話しかけていて、こうくんに好意を持っている女の子はたくさん見てきたけれど、あそこまでめげない人は見たことがない。
そこまで考えたとき、なぜか胸がチクリと痛んだ。
……ん?