「こうくん、帰ろうっ」

「うん」



私の声に笑顔で返事をしてくれるこうくん。

よかった、機嫌直ってる……!

そう安心したのもつかの間。



「ねぇ煌貴、一緒に帰ろうよー」



隣から聞こえた松沢さんの声に、こうくんの表情がみるみる険しいものに変わった。

お、怒ってるっ……!



「……」

「ねー、煌貴聞いてる?」

「……真由、行こ」



完全に無視を決め込んでいるのか、こうくんはそっと私の手を握ってそう言った。

い、いいのかな……?

申し訳なさを感じながらも、私は嫌われているから何も言わないほうがいいと思い、こうくんに従う。

けれど、松沢さんは粘り強かった。