「絶対、愛音のものにしてやる……」
誰にも聞こえないような小さな松沢さんの声は、もちろん私にも届くことはなかった。
今日のこうくんの機嫌は最悪だった。
「ねーえ、保健室ってどこにあるのー?」
「……」
「ねぇねぇ名前は? 教えてよーっ!」
「……」
「さっき男の子たちから聞いたよー、煌貴っていうんだよね? 名前までカッコいい!」
「……」
朝から放課後まで、ずーっとこうくんに喋りかけている松沢さんと、それをことごとく無視し続けているこうくん。
その光景を、私はヒヤヒヤしながら見ていた。
だってこうくんが、イライラが爆発寸前まで迫っている顔をしていたから……っ。
放課後になり、ようやく帰れるーっと伸びをする。