少しだけ、胸がざわつく。

……ん? ざわつく?

どうして?

生まれた感情がなんなのかわからなくて、こうくんの隣に座った松沢さんを見つめた。

松沢さんは、なぜかじっとこうくんのほうを見ている。

……あれ?

なんだか松沢さん、顔が赤い……?

……こ、これってもしかして……。

私の中で芽生えた疑問は、その日のうちに確信へと変わることになる。



「あのー、愛音まだ教科書持ってなくて……見せてほしいんだけど」

「……」



1時間目は英語。

松沢さんは可愛らしい声を出して、上目遣いでこうくんにお願いしている。

一方こうくんはというと、まるで存在を無視するかのように聞こえないふりをしていた。

な、なんだかかわいそう……教科書がなかったら困るだろうし……。



「こ、こうくん、見せてあげたら……?」



ツンツンとこうくんの背中を突いて、小声でそう言った。