「うるせーよ、兄貴は関係ねえよ」



そう言ってエリを睨みつけるケンタの眉間には、何本も縦にシワが入っており、
図星なことが一目で分かった。



「…関係なくないよ、ケンちゃん最近全然歌も作らないし…昼間だってパチンコに行ってるだけじゃん」



「…もういいって」


「何よ!お兄さんの映画の主題歌を歌うのが夢だったんじゃないの!?
一人で諦めて…」


「しつけぇんだよ!!」


そう怒鳴るとエリはそれ以上喋らなくなった、そして決意したかのように荷物を持って玄関に向かっていった。

「帰る」


そう言うエリの頬には涙が幾つも溢れている。



「…」


ケンタは何も言えず、ただ玄関のドアが静かに閉まるのを聞くしか出来なかった。



-ケンタは一ヶ月前の事を思いだしていた-