……そうだったんだ。

私、あのまま走って帰ったから、そのあとのこと知らなかった。

向葵くんを傷つけた。

そればかりが頭に焼き付いて離れない。

──私は、なんて事をしてしまったんだろうって。


一昨日のことを思い出すとズキッと胸が痛んで、俯くと「…こうも言っていたの。」と女の子が言った。

私は、少しだけ目線を上に向けると──


「あのときどうして野原さんが何度も気持ちを伝えてくれたのか、今になってやっと分かったんだ。

そう思えるくらい、俺にも大切な子ができたんだ、──ってね」


えっ……?

……向葵くん、が……?

驚いて、言葉を失う私。

少し前までは私と同じように「恋」が分からないって言っていた向葵くんが、そんなことを言っていたなんて……