……それで、あの日、向葵くんは『用事がある』って言ってたんだ。
「…でも、一度会っちゃったらやっぱり忘れられなくなって、私、欲が出ちゃったの」
「……欲?」
私の言葉に頷いたあと──
「“もう一度、付き合いたい”って思っちゃったんだよね」
そう言うと、切なそうに眉を下げた。
そのとき、ふわぁ〜っと風が吹いて、湿った空気が私たちを取り囲む。
「心のどこかでは諦めていたはずなのに、会ってしまったら三浦くんのことが好きだったって気づいちゃったみたいで…」
「……よっぽど、好きだったんですね」
無意識にそんな言葉を呟いていた私。
私の言葉に一瞬驚いたけど、すぐに「…そうみたい」と返事をした女の子。
……向葵くんのこと、そんなに好きなんだ。