向葵くんが言ってた。

気持ちがないまま付き合ったけど、その子を「好き」になることはなかったって。

恋が知りたいと思って付き合ってみたけど、もし、ほんとに心から向葵くんのことが好きだという子が現れたらその子に失礼だもん。


「私ね、多分恋に憧れすぎてちょっとおかしくなってたのかも!」

「おかしく…?」

「うん。それにほら、夏休みまでにはーって焦ってたでしょ?それもいけなかったんだと思う」


“恋は焦ってするものじゃない。”──そう、本に書いてあった。

私は、それを忘れてた。

バチが当たって、あんなことに巻き込まれちゃったのかもしれない。

だからね──…


「焦らないで待ってみることにする」


恋が分かるそのときまで。

誰かを「好き」になるそのときまで。