「あ…ごめんなさい

こんな遅い時間に」

振り返り去ろうとした彼女を

僕は見送ることはできずに
なんて言えばいいのかな
日影に咲いた花を見過ごすことができずに
日なたに植え替えたくなるような

そんな気持ちになったんだ

「あの…ケーキ屋じゃない僕が作ったものでよければ…」


寝癖だらけで
くたびれたスエットを着てる僕に似合わない言葉を放ったみたいで

なんだか恥ずかしかったけど

振り返った彼女の瞳は
さっきまでとは全然違って
僕は嬉しかった