複雑な気持ちになるけど、とにかく、今は冷静になろう。


「お待たせしました」


私は、アイランドキッチンの広いスペースに、出来上がったパスタを置いた。


見た目は、結構美味しそうだ。


絢斗はさっとソファから立ち上がって、パスタのお皿を運ぶ手伝いをしてくれた。


こんなことを総支配人にさせていいのかなって、あたふたする。


「あ、そうだ。冷蔵庫に……」


「ん?」


絢斗は、私の言葉に反応して、さっと冷蔵庫を開けた。


「す、すみません。私がやります」


一瞬、お皿を取ろうと差し出した右手に、絢斗の右手が重なった。


わっ!!


すぐに手を引っ込める私。


「いいよ、俺がやる。カルパッチョだな。とても綺麗な鯛だ」


こ、これ……このやり取りは、少女マンガなんかで良くある憧れのシーンだよね。


触れ合った手の感触がずっとある。


男性だけど、ゴツゴツしてなくてしなやかな長い指。


とっても綺麗な手をしてる。


何だろう……


この、胸が高鳴るシチュエーションの連続。