「パ、パスタを作ってます」


ダメだ、体もガチガチで、全然集中できない。


「美味しそうだ」


「あ、あの、もう少しで完成するので、ちょっと離れて待ってて下さいね」


私は、慌てて絢斗の腕を優しく振り払った。


「一花に怒られた……な」


「べ、別に怒ってませんよ。料理中なんで……あ、危ないですから」


「仕方ないな。大人しく待ってる」


少し笑って、絢斗は手早くリビングのテーブルにワインの用意をしてからソファに座った。


今まで、いろんな修行をしてきたんだな……何をしても手際がいい。


その様子を少し離れたキッチンから見てたら、やっぱり、今のこの状況がどうしても信じられなくてすごく戸惑ってしまった。


絢斗はかっこよ過ぎるよ……


私、こんなところにいて本当にいいの?


いくら絢斗のお母様のためだからって、私達が一緒に住むなんて無理があるんじゃないのかな?


でも……


今、目の前で起こってることは、確かに、紛れもない事実なんだし……ね。