「なら良かった。花瓶が無いんだ、グラスか何かに……」


そう言いながら、絢斗はとても高そうなグラスを棚から取り出して、水を入れてくれた。


「そんな高価なもの、花瓶にしていいんですか?」


「全然、構わない」


私は、絢斗からそれを受け取り、花を挿した。


綺麗な花達をテーブルの真ん中に置くと、華やかさがプラスされ、それだけで部屋が一気に明るい雰囲気になった。


「本当にありがとうございます。あ、お腹空きましたよね。もう少し待って下さいね」


嬉しい気持ちを心にしまって、私はパスタの仕上げをした。


「何、作ってる?」


絢斗が私の真後ろにサッと立ち、肩に両手を乗せてフライパンを覗き込んだ。


「あ……っ、えと……」


うわっ、ち、近い、近すぎる。


「バターのいい匂いだ」


私の頭の斜め後ろに、絢斗の綺麗な顔がある。


そう意識すると、1mmさえ振り向けなかった。


「早く……食べたい」


絢斗が喋ると、温かい息が私の首筋にかかった。