絢斗はその言葉に何も言わず、ニコッと笑って頭をポンポンしてくれた。


その瞬間、頭のてっぺんから心臓を通って足のつま先まで絢斗の感触が巡り、私の体の中は一瞬にして「幸せ」で満たされてしまった。


私の目の前にある優しくて素敵過ぎる笑顔。


この最高にドキドキするシチュエーションに、私はこの先もずっと耐えられるのかな?


「良いにおいがする。何か作ってくれたのか?」


絢斗が聞いた。


「すみません、勝手に。でも、簡単なものしかできなくて……」


絢斗はスーツの上着を脱いだ。


あっ! これはどうすればいいの?


本当の夫婦なら、きっとこの上着を私が受け取ってどこかに掛けるんだよね。


「一花の料理、楽しみだ。先に着替えてくる」


そう言って、絢斗はそれを持って自分の部屋に入っていった。


ああ……


仕方ないよ、まだいろいろどうすればいいのかわからないんだから。