だって厨房のメイドさんたちから『失敗したらクビ』って聞いていたんだもん。でも竜王様自身が『クビにする必要なし』って言ったんだから、クビは回避できたってことよね。
「ありがとうございます!」
 やったぜ寝食確保! さっさと厨房に引っ込もう! と思ったんですが、竜王様のお話はまだ続いていました。
「それで。……いつもそなたがその『マカナイ』とやらを作っているのか?」
「はい。私、とても不器用でして、ほかのことはいっさいできないんです」
「ほかのこと?」
「はい。食器を洗えば割っちゃうし、掃除をしたらなにかを壊すし、逆に汚すし──」
「くっ……っ!」
 ここに来てからやらかした数々を羅列すると、それまでの無表情を一瞬崩し、竜王様が口もとを押さえました。
 あら、ウケた? というか、竜王様、メイドさんたちが言うほど怖くないと思うんだけど……。
「ライラック!」
「いや、よい。それで?」