そう、目の前の『竜王様』は、以前、私が落とした根菜を拾ってくれたイケメンさんじゃないですか!
 吸い込まれそうな涼しい黒ヒスイの瞳が印象的だったんです、忘れるもんか。
 今目の前にいる竜王様は、怒っているのかあきれているのか、まったく読めない無表情。イケメンがもったいない。
「どうした」
 私が急に頓狂な声を出して顔をまじまじと見たもんだから、竜王様の眉がクイッと動きました。
「申し訳ございません。なんでもございません。失礼いたしました」
「ライラック……そなたか。このスープを作ったのは」
 黒ヒスイの瞳が私をじっと見つめてきます。
 あら意外。竜王様ってば、私の名前を知っていたんですね。それよりなにより。
「はい、そうです。お口汚し、申し訳ございませんでした。すぐに取り替えますので少々お待ちくださいませ」
 怒られる前に謝っちゃえ!