《アイラ》


私は銀河の後ろ姿をただただ眺める。

でも、すぐにドアから出ていって見えなくなった。

……銀河に掴まれた手首が熱い。

私は手首を見つめながら思う。



_____今回(··)もダメだな……。




毎回頑張るんだけどな。

嫌われないように笑顔で、(·)のときと変わらないように話しかける。

さすがに「銀河」って呼ぶのはダメだから、「高橋くん」って呼んでるけど……。

本当は「銀河」って呼びたいよ。

私が何度話しかけても

お揃いのピアスを見せても

……やっぱりダメだね。




銀河は全部、忘れちゃった______




泣きそうになる。涙が溢れてくる。

それでも、私は唇を噛んで懸命に堪える。

泣いたらダメだよ、アイラ。

みんなが見てるじゃない。

いつでも笑顔。

それが、みんなが望む「アイラ」でしょ?

ちゃんと期待に応えないと。

それに、銀河に拒絶されることなんて今までにもあったじゃない。

だから……



  


全然平気。







「ごめんねっ!私がしつこくしすぎちゃった!」



私は明るい声でみんなに言う。

大丈夫……いつも通りだ。

いつもの「アイラ」だ。



「アイラー!大丈夫!?」



私といつも一緒にいる優奈(ゆうな)ちゃんが1番に駆け寄ってきた。



「全然大丈夫!このくらい平気だってー」


 
私はいつもより少し明るめの声で話す。

そうしていると、みんなもホッとしたのか、それぞれの会話に戻っていく。

とりあえず……よかった。



「っていうか、高橋の態度なに!?」

「あそこまで言う必要ねーよなー」

「アイラ傷つけたら許さない!」



仲の良いクラスメイトが次々に話しかけてくれる。

大体の子がクラスでも人気者の子たちで、男子も女子もいる。

こういうのを見ると、私ちゃんとみんなの望む子になれてるんだなって実感する。

ちゃんと私は必要とされてる。




「ホント、高橋何なんだよねー!だって、高橋とアイラ付き合ってたんだよね?」




去年同じクラスだった女の子が聞いてくる。

そっか……みんなの中ではまだあったこと(·····)なんだった。




「そうだよ!今は別れちゃったけど。……だから銀河には言わないでほしいなっ!」




私は笑顔で言う。

 


「えー!なにそれ〜」





みんなが笑いながら流してくれたおかげで、それ以上追求されることはなかった。

……よかった。

だって、銀河に私と付き合ってたなんて言われたら困るもん。

銀河は絶対否定するし、嫌な気分になるよね。







____銀河は私のこと、全て忘れてるんだから。