私は一刻も早く光くんと町田さんからもっともっと遠くへ離れようと思った。
 すると……。


「梓‼」


 私を呼ぶ声。
 その声は……。


「侑子」


 ナイスタイミング‼


「ねえ、梓、これから時間ある? 今からカフェに行かない?」


 それもナイスタイミング‼


「うん‼ 行こう、侑子」


「あ……梓……?」


「うん?」


「なんか今日の梓、ちょっとテンションが……」


「何を言ってるの、侑子、早くカフェに行きましょ」


「う……うん」


 本当にナイスタイミングな侑子に私は救われた。


 * * *


 侑子とカフェでお茶をしてから家に帰り、私は自分の部屋にいた。

 するとスマホの着信音が鳴った。

 私はスマホの画面を確認する。


「え……‼」


 ひ……光くん……。

 どうしよう……私……心の準備が……。

 ……でも……でも出ないわけにはいかない。どのみち大学で会うのだから……。

 私は一度深呼吸して心を落ち着かせて光くんの着信に応じた。


「……もしもし……」


『もしもし』


 いつも通りの光くんのやさしい声。


「……どうしたの? 光くん」


『あっ、いや、特に急用だったわけではないんだけど……今日、梓に声をかけたんだけど、梓、気付いてなかったみたいだから……それで……』


 気付いていなかったわけではない、本当は気付いていた。
 気付いていたけど私は気付かないふりをした。


『……あと……』