「私、負ける気ないから」


「ま……町田さん……」


「容赦しないから、あなたも容赦なく向かってきなさい」


 えっ⁉ 容赦なくって……。


「ま……町田さん……あの……」


「正々堂々と戦いましょ、じゃあ、また」


「ま……町田さん……っ」


 ……どうしよう……なんか大事(おおごと)になっちゃった……。

 そういうつもりで言ったわけではなかったのに……。

 一体これからどうなってしまうのか……。

 このまま何事もないまま静かに収まることは……ないかな……?

 私は思わずため息をついてしまった。



 * * *



 次の日、私はさっそく見てしまった。
 町田さんのアピール攻撃を。
 町田さんは光くんに好き好きオーラ全開で話している。
 そんな町田さんと話している光くん。

 少し遠くにいるからだけど、光くんも町田さんも私には気付いていない。
 光くんたちは私に気付いていなかったから、私はそのまま帰ろうと思って歩き出そうとした。
 すると……。


「梓‼」


 光くんが私に気付いた。

 光くんが私の名前を呼んだ声は聞こえていたけど、私はその声に気付かないふりをした。