……わかってる。『ただの幼なじみ』という言葉を光くんが悪気無く言っているということは。
 ……ただ……やっぱりまだ……。


「梓?」


「……‼」


 私は光くんに声をかけられて我に返った。


「どうしたの?」


「え……」


「なんか違う世界に行っていたみたいだったから」


「……えっと……なんでもないの。なんかちょっとぼーっとしちゃってたみたい」


「大丈夫?」


「うん、大丈夫」


「大丈夫ならよかった」


「ありがとう」


「心配するのは当然のことだよ。だからお礼なんていいよ」


「うん、ありがとう……って、また私お礼を……」


「あはは」


「え……?」


「なんか梓らしい」


「そう?」


「うん、梓らしい」


「なにそれ」


 私はそう言うと光くんと顔を見合わせて笑った。


「……じゃあ、私そろそろ行くね」


「待って梓」


「うん?」


「オレもちょうど帰るところだから一緒に帰ろ」


「え……でも……」


「梓」


「うん?」


「まだ瑠佳のことを気にしてるの?」


「……え……」


「やっぱりそうなんだ」


「えっと……」


 町田さんのことを気にしていないと言ったら噓になる。


「瑠佳のことは気にしなくていいよ」


「え……」