センター試験が刻一刻と迫る中、いつも8割は超えていた数学が越えなくなってしまった。"数学ができない"そういう気持ちになってしまった。そう思うと、数学は出来なくなる。それはわかっている。しかし、その気持ちが払拭できない。

「最近数学の点数伸びないね」

「数学、できると思ってたけど、私できない人でした。先生みたいにできません。」

「センター数学は満点狙えるよ。いけるよ。」

先生は私を励ますために言ってくれたのだろうが、それは私には全くと言っていいほど励ましの言葉ではなかった。むしろ、自分の無力さを感じた。

そんな不安を抱えたまま、センターの2日前の木曜日になった。大橋先生は基本木曜日が一週間の最後の出勤日で、センター試験前日の金曜日は来ない予定だった。しかし、センター2日前にセンター試験が怖い。これで人生が決まる。怖い。と言った内容を塾長と話していると、大橋先生と藤原先生がやってきた。塾長が私の心を代弁して大橋先生に言うと、藤原先生が私に
「石川さん、今大橋先生に明日も来てくださいってお願いしたらきっときてくれるよ?」と冗談半分で言われた。
割と本当に先生に会うと心が落ち着くし、好きだったから会いたかった。だから
「先生、明日来て欲しいな。」
と大橋先生に伝えた。すると
「いいよ。」
と言ってくれた。嬉しくてたまらなかった。

センター試験前日、ちゃんと大橋先生は塾に来てくれて、
「明日、明後日、頑張れ」
と言ってくれた。先生は口下手なので、激励の言葉を言う人ではないが、とても心に響いた。


明日、明後日のセンター試験、自分のためにも先生のためにも頑張ろう。


そう思った。