自習室を出るのが遅くなって、帰る時間がいつもよりも遅くなった。
帰り際、お母さんに今から帰る電話を入れて歩いていた。すると、先生が私を抜かして、曲がる時にこっちを向いて、スマホを持った手でバイバイとしてきた。

いや、そんなことする人だっけ!?しかもイヤホンしながらこっちを向いて手を振った、、、かっこ良すぎる!ずるい!先生、それは天然でやってるのか!?それなら、なおさらたちが悪い。受験生なのに勉強以外のことを考えてしまうのはいけないけど、不覚にも私はときめいてしまった。

家に帰って、余韻に浸っていた。

誰かにこれまでの出来事を聞いて欲しい!そこで一番なんでも話せる晴加にこれまでのことを全て話した。晴加は私と違っていろんな人と付き合って、恋愛経験が豊富な女の子だ。晴加は私の話をずっと聞いてくれ、この時間がとても幸せだった。


12月になると、センター対策をし始める。理系なのに物理がとても苦手だった。しかも、まだ有機化学が終わっていないどころか、ベンゼン環のことを全然学んでいなかった。この無知度合いを知った先生は必死になって教えてくれた。物理も数学も化学も。質問したらなんでも答えてくれた。
ああ、この人には一生勉強では勝てないなと思った。

先生は理系科目が得意だが、文系科目である国語や英語はあまり得意ではなかった。

ある日、私が学校でやった漢文の問題で答えが何故これになるかがわからず、漢文ができる先生に質問しようと思った。その日は、漢文に強い先生がおらず、諦めようとしていた時、
「何それ?漢文?懐かしいなぁ笑。ちょっと見せてみ。」
そう言って、大橋先生は私の漢文の問題を見た。
「先生、国語できへんやろ?無理やろ?」
と言っても、
「いや、できる」
と言って、一緒に考えていた。しかし、案の定、先生は漢文の知識なんて抜けていて、むしろ私が少し教えているくらいだった。数十分考えた後、先生は無理だと悟り、
「ごめん、わからん!」
と言った。
まあ、そうやろうな。漢文に強い先生がきたら教えてもらおう。そう思った。

次の日、漢文に強い先生がきてわかりやすく教えてもらった。その様子を気にしていた大橋先生は、私が教えてもらったところを見計らって、私の席の向かいに座り、
「なんで、これがこの答えやったん?」
と聞いてきた。
「いや、先生どうせ知ったところでやろ。」
「まあ、そうやけど、気になるよ」と言われたので、一から説明した。どっちが生徒なのかわからなかった。笑 だが、なんやかんやそんな時間が私は大好きだった。