「その妖精の名前はね、ウィリナ。
ウィリナの背中には白くて立派な翼が生えていたの。

ある日、ウィリナは人間の世界に降り立ち、妖精としての修行をうけるの。
そこでね、まずは受け入れてくれる場所を探すんだけど...。」

それ、前にもきいたんだけど...。

やばい、眠くなってくるやつだ。

ふと隣を見ると、

ミヨリは既にすやすやと寝息を立てていた。

はやい...。


......。



「そんなわけでね、
ウィリナと恋に落ち、結婚した男性こそが、私たちの祖先だったわけ。
分かった?」

おい、ミヨリ。

ここは起きておけ。

「ミヨリ...?」

「むにゃむにゃ。」

「ミヨリ、私の話をきいてた?」

「妖精さん...?」

「...まあいいわ。
あらかたきいていたようね。
それで、そのウィリナの血を引く私たちの中で、ミヨリを含めこれまで数人だけが、そのDNAを受け継いだようなのよ。」

完全に妄想か幻の話だが、最後だけなんかDNAとかいう科学に基づいた単語がきこえたきがする...。

「すごーい!
でも、どうして分かったの?」

「それは...。」

ミヨリの姉さんは、あやしい間を置いたあと、

「この古文書の記述を元に私が占ったのよ。」

と、古そうな本を取り出してきた。

うわ、うっさんくせえ古文書...。

「やっぱりすごいね!
お姉ちゃんの占い。」

「そうか...?」

「うん!
だって、私とヒビキくんが出会うことも、こうしてまた一緒になれるってこともお姉ちゃんが占いで当てたんだよ!」

それは...当てずっぽうなんじゃないだろうか...。

「でも、本題はここからなの。」

まだあるのか...。

早く帰りたいんだけど。

「実は、この古文書にある家系図と私の占いによるとね...。」

と、謎に間をたっぷりと溜めて、

...。

「ヒビキくん。あなたも同じ祖先を辿っているわ。同じ血を受け継いでいるの。」

「...は?」

「え..え?
ってことはヒビキくんも...。」

「ええ。
ウィリナの羽を持っている可能性が高いわ。」

いやいやいや。

そんなわけないだろ。

「ヒビキくん。
小さい頃からミヨリみたいに羽が出現したことある?」

「ないです、断じて。」

「そう...。
それなら可能性は低いかもしれないけど...。」

けど...?

「一応、遺伝子検査をしましょう。
そうすれば本当にウィリナの羽を持っているかどうかが分かるわ。」

「え...、いや、それは遠慮...。」

「ヒビキくん。やってみようよ。」

なんかいきなり科学的な検査始めようとしてるんですけど。

色々と矛盾してるだろこれって。

検査に使うものも、本当にそれっぽいものだ。

そもそもそういう資格ある人なのか...?

「大丈夫。
お姉ちゃんは魔女とお医者さんのハイブリットだから。」

...なにがハイブリッドだ、

ばか!