「私、軽井沢が 嫌いだけど 家も 嫌だったから。パパもママも がさつで。身なりも 構わないし。努力しないくせに 文句ばっかり言っていて。」


由希は 言いながら だんだん 悲しくなってきた。


絵里加のママは そっと 由希の肩に 手を置く。
 


「ほとんどの家がそう。みんな 寛ぐことと だらしないことを 一緒だと思っているのよ。私も そういうの 嫌だったなあ。」


と懐かしそうな目で言う。
 

「別荘で 絵里ちゃん達に会うでしょう。みんな優しくて きちんとしていて。でも楽しくて、一緒に居たくなるの。お金持ちで 余裕があるからだってだ みんな思っているけど 私は 違うと思っていたわ。」


由希が 強く言うと 絵里加のママは頷く。
 

「由希ちゃん すごいわ。早くに気付いて。私なんて 結婚して 廣澤の家族と 出会うまで わからなかったもの。お金持ちになれば 幸せになれると 思っていたのよ、ずっと。」


と微笑んだ。
 

「お金だけあっても だめだよね。だから私 絵里ちゃんの 近くに来たかったの。何が違うのか 知りたかったから。」

由希が言うと 絵里加のママは 優しく微笑んで、
 
「何かわかった?」

と聞いた。
 

「うん。すごくよくわかったよ。みんな 家族の為に 動いているの。絵里ちゃんママ達も 伯父様の家の みんなも。いつも 感謝しているし。だから 優しいの。」