「あら、由希ちゃん。おめかしして。」
と微笑む祖母に、
「ばあば。髪を結んで。」
と由希は、ブラシを手渡す。
絵里加に憧れて 髪を伸ばしている由希。
毎朝、祖母に結んでもらう。
「由希ちゃんは 絵里ちゃんに 似ているからね。可愛く結んであげるわ。」
祖母は、真っ直ぐな 由希の髪を 優しく梳く。
「由希ちゃん パパとママ お出掛けするけど、本当にいいの?」
母に 念を押されて、しっかり頷く由希。
母は、呆れた顔で 祖母を見る。
「大丈夫よ。私達もいるし。」
と祖母は言うけれど 母は 不満気に 由希を見る。
「パパとママに どこにも 連れて行かないとか言わないでよ。」
もう一度 由希は言われて やっぱり 大きく頷く。
「はい、できた。行ってらっしゃい。」
と祖母は 由希の肩を叩き 由希は 笑顔で立ち上がる。
呆れたような、少し寂しそうな顔の 母を一度見て
「行ってきます。」
と玄関を出る由希。
その先には、由希が憧れる 世界があったから。