だって、私は知らない。
聞いたこともない。
松士って武将の名前も、息子たちの名前も、跡取り争いの方法だって。
日本史に微塵も興味がなくて、教科書に出てくる範囲をテスト前に覚えていただけの私が、こんなマニアックな話を知っているわけがない。
一度も聞いたことがないのに、私は夢の中で同じものを見たの?
てっきり私が夢の中で勝手に作り上げたおとぎ話だと思っていた。
だから、わけが分からない。
本当にあった話だったなんて。
「二人で一人の女を取り合って、子供を産ませた方を跡取りにするというものだったらしい。嘘みたいだろ?いやあ、これだから歴史は面白い」
うんうんと頷く先生の顔を見ながら、一人で呆然とする。
聞けば聞くほど、夢の中の出来事に一致していって、段々鳥肌が立っていく。
あれは夢のはず。
だって私、タイムスリップしていないもん。
いつも通りの退屈な一日を送っているんだもん。