「……話は逸れるが、この時代に面白い武将がいてな、えっとなあ…」



日本史の授業はいつも眠い。


頬杖をついて、じっとただ黒板を見つめているだけの授業だからだ。

かと言って体を動かしたり発言を求められたりする授業が好きかと問われれば、それも嫌いだ。


眼鏡を掛けた少し背の小さい中年の先生は、持っているノートをペラペラめくっている。

あのノートには、教科書には載っていない、先生が個人的に好きな武将の逸話がびっしり書かれているらしい。



私は、視線を先生から一番前の席でノートを取っている女の子に移した。

あの子は、私が三年間好きだった彼を、知り合って二週間程度で落とした子だ。
ウェーブが少しかかったロングヘアーと女の子らしい文房具が、彼の好みらしい。


怖いくらいまっすぐなミディアムヘアーで、持っている文房具は、駅前に立っている塾の勧誘の人がくれたものか、何のデザインもされていない使い勝手だけを優先したものだけ。
そんな私とは、正反対だ。