高瀬はあんな調子でつかめないし、落ちたら傷つくことになるから嫌なのに、ドキドキしちゃってる。

ついこの前まで西河が好きだったのに……すぐ高瀬ってどうなの。

ちょろすぎるでしょ、わたし……っ。

簡単に落ちたくない。

高瀬なんて、高瀬なんて。

「好きに、なりたくなんかない」

でも──。

惹かれてる、確実に。


「環……」

「穂波ぃぃ……」

ガバッと抱きつくと、きつく抱きしめ返してくれる穂波が大好き。

穂波さえいたら、それでいいのに。

「理屈じゃないよ、そういうのは。明日になったら昨日とはちがう人を好きになってる可能性も、いっぱいあるんだから。頭でごちゃごちゃ考えずに、目の前にいる高瀬くんを見たら自ずと答えは見えてくるんじゃない?」

ごちゃごちゃ考えないで……目の前の高瀬を見る?

胸にすんなり入ってくるなんて、穂波の言葉は不思議だね。

目の前の高瀬を見る。

目の前の高瀬を見る。

自分の胸にそう言い聞かせながらトイレを出ると、少し離れたところに高瀬と西河は立っていた。

なにやら女の子と一緒だ。

「お願いします、連絡先だけでも教えてください!」

「すっごいタイプなんです〜!」

ま、まさか、ナンパされてる?