やってしまった。

「つっ……」

そう言って彼は叩かれた方の頬を手で押さえている。

どうしよう。頭の中で色んな思いが駆け巡る。

また感情が暴走する私の悪いところが出てしまった。これ以上一緒にいたら、私だけでなく私たちの仲間や会社にまで迷惑かけちゃうんじゃないだろうか。

自分を守れない人間は仲間なんか守れない。

彼の言う通りだ。

「申し訳ありません!」

そう言った瞬間、涙がツーっと頬を伝った。

頬を押さえたまま、彼がこちらに視線を向ける。

彼の切れ長の目が一瞬見開くも、あれほど強気の彼が何も言わずただ私をじっと見つめているだけだった。

「本当に、私はどうしようもないです。変わりたいのに変われないです。ここに着いてきたのもあなたに迷惑かけてしまっただけで、仲間を守るなんて私ごとき人間にはできるはずもないのに、もうあなたにも仲間にもこれ以上迷惑かけることはできません。今回は……社長への取材はもう……」

私の震える体が何かに包まれる。

暖かくて大きくていい香りのする……。

「もういい」

彼の低音が耳元で小さく聞こえた。

自分のものではない鼓動が激しく私の胸に響いてくる。

「……すまない」

私を強く抱きしめて、謝っているのは、ひょっとして、ひょっとして……。

錦小路 礼社長?!