彼の切れ長の目が、私の胸の内を見極めるかのようにするどく見つめていた。

爽やかな香りが彼の揺れる髪から漂い、吐息が頬に触れそうな至近距離に鼓動が速くなっていく。

もう随分経ったはずなのに、さっき握りしめられた腕がジンジンしていた。

「俺が男だってこと忘れてない?」

彼の長い指が私の顎を掴み上に引き上げられる。

え?!

「お前自身で俺に恩恵を与えてくれてもいいんだぞ」

「お、恩恵を与える?」

声が上ずる。

その恩恵がどういう意味を含んでいるのかくらい私にも理解できていた。

ただ、そんなこと今まで経験がないだけで。

心臓が止まってしまうんじゃないかというくらい激しくバクバクしている。

ここで私がオッケーを出したら、彼は取材を受けてくれるんだろうか。

「どうする?」

「どうする、って……」

自然と瞬きが増える。でも彼のするどい眼差しから目を逸らすことができなかった。

「どうせ初めてだろう?優しくしてやる」

彼の顔がゆっくりと近づき、私の耳元に彼の柔らかい唇が触れる。

「ひゃっ」

ぴりっと電気が走るようなむずがゆい感覚に思わず小さく声が漏れた。

これは、どうすればいい?自分をかけてチームの存続を選ぶべき?

っていうか、このような状況に全くといっていいほど嫌悪感がない自分に一番驚いている。

私ってば、ひょっとしてこの錦小路社長とそうなってもいいなんて心のどこかで思ってる?

さっき、彼女らしき人物と間違えて手を握ってきた、この錦小路 礼と。