でも……今更どうしろっていうの?

彼なら私たちの窮地を救えると信じてベルギーまで追いかけてきたというのに。

「例え一時しのぎをしたとしても、次に繋がらなければ結果は同じだ」

彼の言うことは全て最もだった。

どうしていいかわからず、黙ったままその言葉への返答を自分の中で模索していると彼がふいに尋ねる。

「どうして俺が出たら売り上げが伸びると思う?」

「それは……それは、あなたがその存在を表に出していないからです」

「表に出していないっていうことは、知られていないってことだ。人は未知なるものに興味を抱く。そしてその逆でもう既に知っていることをいくら目の前にぶらさげられたって手に取りたいとは思わない」

彼はそう言うと、前髪をかき上げ軽く息を吐く。

「俺たちだってそうだ。いつだって新しい何かを探している。そしてそれを手にとった客が客を呼び、更にその客が客を呼んでいくんだ。雑誌だって同じだろう?」

「同じです。企画がマンネリ化していたことは否めません。日頃忙しすぎて新しい何かを探す時間がなかった、っていうのは言い訳ですよね」

「そうだな」

彼が少しだけ口元を緩めたその時、私の中からようやく言葉が出てきた。

「考える時間をください。社長がもし私たちの雑誌に出て下さったその一時しのぎの時間を無駄にしません。必ず次に繋げます!」

「一時しのぎを無駄にしない……か。俺にひと肌脱げって?お前に何の恩恵もあずかっていないのに?」

腕を組み、意地悪な笑みを浮かべた彼の顔が私に近づく。