その後、俺は密かにSビールの山科課長とベルギーに出張に行き、不動産や日本ビール贔屓のビアカフェオーナーの紹介を受けた。
日本人が海外でビールを作るという試みはまだあまり例がない。
現地の人間も本当にできるのか疑わしいとは言いつつも、日本ビールの味の良さはとてもよく理解しているし、現地に受け入れられれば需要はあるだろうとのことだった。
山科課長も俺の企画にはかなり興味を持っていて、うらやましいと何度も言っていた。
Sビールくらい大きな会社だと、逆にそのような企画は自分たちの首を絞めかねないから通すのは難しいだろうと……。
着々と準備を進めながら、渡辺の様子を伺う日々が半年ほど続いただろうか。
渡辺からもようやく腹が決まったと連絡が入ったの皮切りに、俺はいよいよ稲葉部長と上層部へ企画を上げることにした。
当時の社長、副社長を含め、そうそうたる役員メンバー達が揃った役員会議室で俺は企画の説明を始める。
流石にこれだけの重鎮を集めての企画会議は初めてだったし、緊張していなかったと言えば嘘になるが、誇らしい気持ちの方が勝っていた。
全ての説明を終えた時、常務の一人が眉をひそめる。
「やはり噂は本当だったか」
副社長が腕を組みながら難しい顔をして頷く。
「ああ、まずいことになった」
まずい?
どういうことだ?
俺は静まり返った役員室で部長と顔を見合わせた。
日本人が海外でビールを作るという試みはまだあまり例がない。
現地の人間も本当にできるのか疑わしいとは言いつつも、日本ビールの味の良さはとてもよく理解しているし、現地に受け入れられれば需要はあるだろうとのことだった。
山科課長も俺の企画にはかなり興味を持っていて、うらやましいと何度も言っていた。
Sビールくらい大きな会社だと、逆にそのような企画は自分たちの首を絞めかねないから通すのは難しいだろうと……。
着々と準備を進めながら、渡辺の様子を伺う日々が半年ほど続いただろうか。
渡辺からもようやく腹が決まったと連絡が入ったの皮切りに、俺はいよいよ稲葉部長と上層部へ企画を上げることにした。
当時の社長、副社長を含め、そうそうたる役員メンバー達が揃った役員会議室で俺は企画の説明を始める。
流石にこれだけの重鎮を集めての企画会議は初めてだったし、緊張していなかったと言えば嘘になるが、誇らしい気持ちの方が勝っていた。
全ての説明を終えた時、常務の一人が眉をひそめる。
「やはり噂は本当だったか」
副社長が腕を組みながら難しい顔をして頷く。
「ああ、まずいことになった」
まずい?
どういうことだ?
俺は静まり返った役員室で部長と顔を見合わせた。