彼のコーヒーを飲む横顔も、知性のあふれた切れ長の目も、時折組み替える長い脚も、私が今まで出会っただどんな男性よりも素敵だということは否めない。

そもそも、私みたいな人間が、二人きりで優しい言葉をかけてもらえるような相手ではないんだろう。しかも日本を離れたベルギーで。

華麗な見た目だけはなく、これまで一人で戦い抜いて今の地位をキープし続けている彼には間違いなく仕事のできるオーラまでもが輝きを放っている。

彼からの言葉の一つ一つを受け取る度に、自分の力では太刀打ちできない相手であることを嫌でも認めざるを得ない。

男なんてくだらない生き物で、そんな男なんかに負けるもんかって仕事に打ち込んできた私にとって、初めてその姿を眩しく見上げることのできる男性なのかもしれない。

彼を知るごとに、その人物のすごさを目の当たりにしこれ以上踏み込むのは烏滸がましいんじゃないかって気持ちにすらなってくる。本来の目的から考えたら本末転倒だけれど。

出会って実はまだ二日だというのに、すっかり私を見抜いてしまった彼の目の鋭さにも驚かされていた。

自分を守れない奴が仲間を守ることはできない……か。

この二日、彼が助けてくれなかったら自分はどうなっていたんだろう。

自分の浅はかな言動が改めて情けなくて恥ずかしくて、それが一層彼の前でドキドキする原因なのかもしれない。

今、変わらなければもう一生変われないような気がした。

「私、今日から変わります」

彼の端整な横顔を見つめながらゆっくりと言った。