「やはり、俺が最初に言ったようにお前の衝動的な言動と危機管理のなさが原因だと思う」

「はい。その通りだと思います」

「ただ」

「ただ?」

「お前のその気概は正直感心する」

「それは褒めてもらってるんでしょうか?」

「そうとも言える」

ようやく私に視線を向けた彼は、コーヒーカップを手にとり続けた。

「確か、お前は俺の前に立ち塞がって『危険を冒してでも守らなくてはならないものがある』と言っていたが、そこまでして守らなければならないものとは一体何なんだ?」

そういえば、どうしても彼を引き止めたくてそんなことを言ったような気がする。

その言葉は半分は反射的に言ってしまったことだったけれど、私の衝動の原点はいつもそこにあるのかもしれないとふと気づく。

守りたいものは、私の大切な……。

「大切な仲間……です」

「仲間?」

彼はコーヒーを一口飲むと口元を緩め続けた。

「そこは仕事、とは言わないんだな」

「はい。もちろん、仕事も大事ですが、仲間があってこその仕事なので」

「ふん」

鼻で軽く笑った彼は、もう一度ゆっくりとコーヒーに口をつける。コーヒーの湯気が彼の長いまつ毛を揺らしていた。

私は微動だにせず彼からの言葉を待つ。

しばらく何かを考えている様子だった彼が静かに言った。

「その仲間のためにも、もう少し自分を大事にした方がいいな」

思いがけず、彼からの棘のない言葉に驚く。

「なんだ、その顔は。俺がお前に対してようやく優しい言葉をかけて驚いたか?」

彼は前髪を掻きあげると、目を細め笑った。

その目の奥に見えた柔らかい光に、一瞬私のことを理解しようとしてくれてるような気がして胸の奥が熱くなる。きっとそんなはずはないだろうけれど。