誰もいなくなっただだっ広いリビングに一人残された私は大きなため息をついた。

スマホを片手にそっとベランダに出てみる。

中から見ていたよりも広いベランダは、やはりもったいないくらい質素で何も置いてはいない。

広いベランダの手すりから顔をのぞかせると、想像通りのピカピカの夜景が広がっていた。

都会の光は色鮮やかにそこに存在するであろう誰かの人生を輝かせている。

その街から見ればここにもまた誰かの人生が光ってるように見えてるんだろう。

こんなたった一人の社長に振り回されてる私の存在なんて誰も気づくはずはない。

本当にこれでよかったんだろうか。

早々に彼のことはあきらめて、他の誰かを探すべきだったんじゃないかって。

社長に言われたように、私は相当の意地っ張りだ。

自分の後先も考えず。

錦小路社長が「俺も男だから、何があっても責任はとらない」だなんて言ってたけれど、あれほどマスコミを嫌い、リスクを恐れる彼が間違いを起こすなんてことはありえないと思っている。だから、一緒に同行するってことも言えたんだけど。

ただ、彼に言われた自分の性格の難点は、結構堪えている。

あんなにズバズバと言わなくたって。

かわいげのない女だし、リスク管理はなってないし、ろくでもない奴と言われているようなもの。

別にそう思われたって構わない。

だけど、彼にそんな風に言われる度に、なぜだか今まで感じたことのないような胸の痛みを感じていた。

くやしいけれど言われてることは全て本当のことだから。

今だかつて、こんなにも向きつけてはっきり言われたことがあっただろうか。

しかもまだ出会って数時間しか経っていない相手に。