「遠慮なくいただきます」

気を取り直して、彼に頭を下げると缶ビールの蓋を開けた。

プシュッと小気味のいい音が静かなリビングに響く。

ビールは程よく冷えていてまさに私好みだった。

喉元に流し込むと、思っていた以上に喉が渇いていたことに気づく。

気付いたが最後、ごくごくと飲む勢いが止まらず、ほぼ一缶を一気に飲んでしまった。

「おいひぃー」

缶から口を離した瞬間、思わずそんな声が漏れる。

「……お前」

そう呟いた社長がソファーで体をかがめて揺れている。

え?何?痙攣?

まさかこの社長にして持病を抱えているとか??

「社長!大丈夫ですか?!」

慌てて彼のそばに駆け寄ると、彼はお腹を抱えて必死に笑いを堪えていた。

「お前、ふろ上がりの親父みたいないい飲みっぷりだな」

「は?」

ふろ上がりの親父?

「まぁ、立ってないでここに座って飲めよ」

目に涙をいっぱいためて笑う社長がソファーの上をポンポンと叩いた。

親父って、二十七歳のレディに向かっていう言葉じゃないわよね!

だから日本の男は嫌なのよ。いつだって女性を見下してるんだから。

私はプイっと顔を背けつつも、せっかくなので彼の横に間をあけて座らせてもらう。

ソファーはイライラする私の体を絶妙の安心感で受け止めてくれた。

革のいい香りがするなんとも言えない心地のよいソファーだ。

そしてそんなソファーの背もたれに体を預けてビールを飲む彼は、くやしいけれどとても絵になる。

どこのパーツをとっても美しく品があって、よく見なくてもやはり間違いなくイケメンだ。

もっと優しければ非の打ちどころがない男性だろうけど。