すると、山川さんは岡山さんと顔を見合わせ吹き出した。

「ほんと、藤さんって仕事一筋って感じだよね。ある意味尊敬するよ。だけどせっかくバーに来たんだし、少しくらい何か頼まない?」

「あ、気がつかなくてすみません!こちらの会計はうちで持ちますのでどうぞ好きなもの選んで下さい」

私は慌てて手帳を閉じ頭を下げると、テーブルの上にあったメニュー表を山川さんに手渡した。

二人は珍しい名前のカクテルをバーテンダーに頼み、「藤さんも何か頼んで」とメニュー表を私に戻す。

さすがにこの場でお酒を飲むことは憚られる。

お酒は強い方だけど、一応今も仕事の最中だし、万が一酔ってこの二人に何かされでもしたら……。

まだ完全に気を許せていない私はノンアルコールのビールを頼むことにした。

「あれ?藤さんお酒飲まないの?」

すかさずそう言ったのは岡山さんの方だった。

「ええ、一応まだ仕事の延長なので」

「お堅いなぁ。少しくらいどってことないじゃない」

山川さんもソファーにもたれ、足を組み替えながら言う。

ええ、私は堅い人間なんですよ。

女性としては面白みもなんとも感じないでしょうけれど、なんせ仕事が第一優先なんで!

私は無理矢理笑ってみせた。明らかにわざとらしいと思われたって構やしない。

女をむき出しにして男性と張り合って仕事なんかできるわけない。

自分は半分男だと思ってるくらいでちょうどいいんだ。でないと男性は皆舐めてかかってくるでしょう?

かつて学生の頃、主任に小ばかにされていた先輩やフィンランドで出会った女性、そして今の職場で出会ったできる女性たちをそばで感じながら、勝手にそんな結論に辿りついていた。

かわいくなくたって仕事ができればそれでいい。