彼らの背中をぐっとにらみながら、私も後に続いた。

階段を降りた正面に簡素な黒い扉があり、その扉の真上に設置された小さな電灯が扉をほのかに照らしている。

よく見ると、その黒い扉の真ん中にゴールドの文字で【Your Bar】と小さく記されていた。

ここは間違いなくバーだということにとりあえず安堵する。

「ここです。入ろうか」

山川さんは私に目配せすると、ゆっくりとその扉を押しやる。

開いた扉の向こうから微かにジャズミュージックとタバコの香りが漂ってきた。

扉の奥は、縦長のさほど広くもないスペースにバーカウンターとカウンターに5席、カウンターの正面にソファー掛けの椅子とテーブルが三席ほど並べられている。

店内の雰囲気は扉と同じく黒が基調で電飾も薄暗い。

その薄暗さでバーテンダーの姿も何人か入ってる客の顔もはっきりとは見えなかった。

まさに隠れ家的バーだ。

間違いない。

少しずつ、この二人への不信感が薄らいでいく。

「お久しぶりです。奥の席いいですか?」

山川さんは、カクテルを作っているオールバックのバーテンダーに慣れた様子で声をかけると一番奥のソファー席に向かった。

カウンター内にはバーテンダーがたった一人。店長も兼ねているのだろうか。