男一人ならまだしも、男二人を撒くのはなかなか至難の業だと頭の片隅で思いながら、岡山さんに顔を向け、目に力を込めて言った。

「では、よろしくお願いします」

私の目力だけは昔から褒められる。その目でにらまれたら誰も嘘はつけないよって。

大きめの少しつり目の二重が、こういう時には役に立つらしい。

岡山さんは一瞬小さな目をしばたいたけれど、薄い唇の口角を上げにんまり笑った。

「こちらこそよろしく」

私は二人の後ろを少し距離を置いて着いていく。

疑わしきは罰せず。

だけど、一寸も気を緩めることはしない。

こんなことになるなら、松下さんに頼んで一緒に来てもらえばよかった。

女一人だとややこしいことに巻き込まれたら、それこそ編集長に迷惑かけちゃうから。

……後悔先に立たず。

駅から大通りを十五分ほど歩いた先の路地に入っていく。

路地と言っても、小さな居酒屋やカフェがところどころにあり、人気はまばらながらにもあった。

その一角にひっそりと建っていたレンガ造りの三階建てのビルの地下に向かう階段を二人は降りていく。

地下か。

隠れ家的バーだからか、表にはなんの案内も出ていないのか。それとも?

ドキドキが加速していく。

何かあった時すぐに連絡取れるようにバッグから取り出したスマホをスーツのポケットに入れてぎゅっと握りしめた。

錦小路社長め、私はあなたのために命懸けでがんばってるのよ!

出会った暁にはどれほど私が社長のために血と汗を流したか教えてあげるわ。