エピローグ

籍を入れた翌年の春。

俺たちはベルギーでこっそり式を挙げた。

都の両親と弟、俺の母と澪、そして渡辺夫妻がサプライズで祝いにかけつけてくれた。

「会った時から俺はこうなると思ってたよ」となどと俺を冷やかしてきた渡辺を苦笑しながらはぐらかすも、あの時都をベルギーに連れてきたことはやはり偶然ではないと感じている。

15世紀に造られた淡い色の荘厳な教会に、彼女の真っ白なドレスがとてもよく映えていた。

それ以上にキラキラと輝く彼女の大きな瞳とはじける笑顔が、その場所にいる皆の心を明るくする。

愛しい。

一時も離れたくない。今すぐにでも抱きしめたいほどに。



あの日、太東出版の件は秘書の米倉がいち早く情報を入手し俺に知らせた。

聞いた瞬間、無鉄砲な都だ。咄嗟にあいつが迷惑かけまいと俺から離れていくんじゃないかと思いいてもたってもいられなくなる。

もう夜も遅かったが都を呼び出し彼女にプロポーズしたわけだが、まさか、俺の予想を裏切ってあいつは俺との関係を肯定することで太東出版に受けて立とうとしていたとは。

しかし、俺に対する思いをまっすぐにぶつけてきた都に、一層彼女への愛が深まった。

俺たちにどんな困難が及ぼうとも、絶対離しはしないという決意が沸き上がる。

これから先、また俺のせいで変な奴に付きまとわれることもあるかもしれない。

俺はどんな危険に冒されても彼女を守るとここに誓う。

自分の命よりも大切なものの存在。

それを都が気づかせてくれたのだから。