24.行くぞ!都!

「都ー!いやいや、新婚ほやほやのにしきこうじ、みやこさーん!」

「もう!おちょくるのはいい加減やめて下さいよー」

毎回私を呼ぶ度に、そう言ってからかってくる坂東さんを笑いながら軽く睨んだ。


礼さんと私は互いにプロポーズした日から一か月後、籍を入れ一緒に暮らしている。

私は今や錦小路 都という、まるで紅白のオオトリで歌えそうな格の高い演歌歌手のような名前になった。

いやいやそれは父に失礼か。

そんな父と母も私たちの突然の話に腰を抜かしていたっけ。

母なんて「あなたみたいなじゃじゃ馬にこんな素敵な社長さんが思いを寄せてくれるなんてねぇ」と、何度も放心状態で呟いていた。

まぁ、それも無理はない。私が男性を家につれてくるなんてこと今までなかったし、結婚する気もないだろうと大方あきらめていたらしいから。

私だってそうだ。

結婚まではそれなりのプロセスがあってからだと思っていたし、まさかこんなに早く彼と結婚するとは思いもしなかった。

だけど、彼がもう待てないと会う度に言うので、半分私が折れた形でバタバタと互いの親への挨拶を済ませ、式はせずに籍だけ入れた形になった。

式は来年の春、ベルギーで身内だけでこっそり挙げる予定にしている。

「日本なんかで挙げたら、マスコミの恰好の餌食だ」

相変わらずリスク管理に事欠かない彼だったけれど、私たちの雑誌に掲載されてから業界だけでなく全国民からの視線の的になり、マスコミ業界から取材依頼が絶えなかった。

もちろん彼のことだから、取材はほとんど拒否。

だけど、こんな自分でも誰かの役に立つかもしれないと、最近は内容と出版社を厳選して時々取材を受けているようだった。

その度に、彼から「お前のせいだ」と言われるけれど、それもまた楽しい日々。


「編集長が会議室でお呼びよ」

坂東さんはアンパンを頬張りながら奥の会議室を指さした。

「はい!ありがとうございます!」

私は錦小路社長の記事をとってきたことで【JOB♡JHOSHI】だけでなく、GO!GO!出版の知名度を上げたと、先日急遽社長表彰を受け更に仕事が力が入っている。

編集長からの呼び出しって、また新しい企画の話だろうか?