「まいったな」

彼も自分の右手で目元を覆うと、うつむき肩を揺らして笑い始めた。

「え?」

「都がそうくるとは、さすがの俺でも予想できなかった」

礼さんは尚も笑いながら、私を肩を抱く。

「都のところにもやってきただろう?俺たちの関係の確証を得ようとしている太東出版の奴が」

やっぱり、彼は知っていたんだと思いながら頷いた。

「都のことだから、俺に迷惑かけまいと勝手に一人で動き出すんじゃないかと思ってはいたが、まさか俺にプロポーズしようとしていたなんてな。しかし、どうしてそんな考えに至ったんだ?」

まだこの状況をどう受け止めたらいいのかわからず手が震えている。

「太東出版がどこまでの情報を得ているのかはわからなかったけれど、例え私が二人の関係を否定したってきっと相手はどこまでも追いかけてくるし、きっとそれによって礼さんにも私たちの仲間にも迷惑がかかってしまう。だけど、認めてしまった上で更に結婚までしたら、そのスクープはきっと出版社にとっても私達にとっても何一つ不利益はないと思ったからです。それに……」

「ん?」

「私は礼さんとの関係に嘘をつきたくなかったし、ましてやそれで別れることになるなんてことは考えられませんでした。それって、すごく一人よがりだし勝手だし、ひょっとしたら礼さんにも迷惑かけることかもしれないけれど、どんなことがあったって、あなたとずっと一緒にいたかったから……すみません」

彼は私の言葉を聞き終えると、口元を緩め私を優しく引き寄せた。